事件は港からやって来た……横浜・神戸 二都物語
2005
12
Sep
Posted by MAO(野知潤一) on 21:44 / Category : info
 港町(みなとまち)。
 この言葉には、潮風と異国の香、そして人をわくわくさせる響があります。日本の代表的な「港町」としては横浜と神戸がすぐに思い浮かぶでしょう。
 とはいえ、いま実際に探訪したとしても、そこは港湾設備がある街ではあっても探している「港町」を見つけるのは難しい。粋なマドロスさんがたむろする酒場もなければ、出船のドラの音が聞こえてくることもないのです。人気のない岸壁には、巨大なガントリークレーン、積み上げられたコンテナとそれを引いて行くトレーラが行き交うだけ。
 探している「港町」はどこにあるのでしょうか?

 さて、江戸時代の日本は鎖国し、長崎出島だけが外国に開かれた窓でした。しかし幕末、米国のペリー提督が黒船を率いて三浦沖に姿を現してから太平の世のまどろみは覚め、幕末の動乱を経て今に続く近代国家としての日本が生まれます。
 先ずは一八五三年(嘉永六年)に「日米和親条約」で下田と函館が開港されます。しかし、この時は外国船の出入りを許すものの航海に必要な薪炭や水、食糧の補給のみで貿易は許されていませんでした。その後、開国の要求は厳しくなり、一八五八年(安政六年)に「日米修好通商条約」が結ばれ、英国、フランス、ロシア、オランダとも修好条約を締結した日本は本格的な開国の時代を迎えたのです。
 そのとき指定された開港場は箱館(現・函館市)、神奈川(現・横浜市神奈川区)、長崎、兵庫(現・神戸市兵庫区)、新潟の五港。そこでは外国人の居住と貿易が認められました。その中心となったのが横浜と神戸です。

 海外から人、モノ、そして新しい知識がどっと流れ込んだのですから、街は活気に満ち、同時にさまざまな衝突や摩擦も起こります。そうした混沌としたエネルギーは新しい文化を創造し、やがてそれらは日本全国へ広がっていったのです。
 まさに「事件は港からやって来た」のでした。
「事件」が起これば「ニュース」が生まれます。開港間もなく英字新聞が発行され、明治三年には日本で初めての日刊新聞も横浜で誕生しているのです。

 前講釈はこの辺にしておきましょう。
 この「事件は港からやって来た……横浜・神戸 二都物語」は横浜の佐田薫子さんと神戸の田中良平さんのコラボレーションです。大雑把な見取り図はありますが、毎回テーマを設定し、それをお二人の感性でそれぞれが異なる「もの語り」を紡ぎ出していこうという趣向です。初回の「事件」から始まり、その後は「建物」「ランドマーク」「ホテル」など控えています。
 幕末の開港場からハイカラな時代を経て現代まで、この連載の中で生まれるさまざまな物語の舞台は港町「横浜」そして「神戸」。記憶は記録され、語られることで継承されていきます。横浜と神戸という東西の「港町」で展開する二都物語を堪能してください。

二〇〇五年九月十四日
マチともの語り編集室
野知潤一

 



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