回顧と展望 その一 ~電子出版市場が動き出したのだが - エディット・ピラフ マチともの語り-地域・物語り・短編小説
2006
13
Dec
Posted by MAO(野知潤一) on 15:20 / Category : エディット・ピラフ
久しぶりの編集後記です。
斯くも長き不在の理由は?
サボっていたわけじゃなく、逃亡していたわけでもなく、ただずっと悩んでいたのです。それで結局、ない智恵を絞っても、なにも出てこないということがよくわかった(笑)。マチともの語りも今年は踊り場に立ち竦んだ一年でした。

と愚痴はさておいて、今年の電子出版の動向はどうだったのかといえば、世間一般的には「急成長する電子出版市場」という評価になるのだろう。
「急成長する〝ことが各方面から期待される〟電子出版市場」といった方が正確かも知れない。

ブロードバンドや無線LANなどの普及、携帯電話などのデバイスの機能の向上により、デジタルコンテンツの利用はますます盛んになっています。なかでも電子書籍の市場規模は、2006年3月末時点(2005年度)では、約94億円、対前年度比では約2倍に成長しています。2005年3月末時点(2004年度)の電子書籍の市場規模は約45億円と推定されるので、内訳としては、PC/PDA向け電子書籍市場が約48億円、ケータイ向け電子書籍市場は46億円となっています。
……「電子書籍ビジネス調査報告書2006」の紹介

次の2006年度(2007年3月末)には160億円を越えるのではないかと威勢のよい予測も出ています。やっと大企業が真剣に考えるに値する市場規模が指呼の間に見えようとしている、という期待感が行間から溢れています。
でも、これで待ちわびていた電子出版時代の幕がようやく開くのだと手放しで喜んでいいのかということ、ちょっとちがうかも知れないと考えています。

 2006年3月末時点(2005年度)で約94億円、対前年度比で約二倍と急拡大を続ける電子書籍市場ですが、中でも「電子コミック」の伸び率は大きく、電子書籍市場を牽引する形で成長しています。2006年3月末時点(2005年度)の電子コミック市場規模は約34億円と、電子書籍市場全体(94億円)の36%を占めます。
 さらに、第三世代携帯電話の普及とパケット料金定額制の一般化によって、ケータイ向けコンテンツ大きく伸び、二年半で、PC向け電子コミック市場の2.1倍となっています。そんな中、2005年度のケータイ向け電子コミック市場には、電子書店や大手出版社などに加え、これまで出版と関係がなかった異業種からも、新規参入が相次ぎ、競争が激化しています。
……「電子コミックビジネス調査報告書2006」の紹介より

電子書籍は「文芸」「コミック」「グラビア」と大きく3つのカテゴリに分けられるのですが、急激に市場として成長しているのは「コミック」のみで、それも「ケータイ向け電子コミック」が担っているだけであるらしいとわかります。

つまり、書籍で文芸作品が売れていないのと同じように、電子出版でも文芸作品が売れているわけではないということですね。
これではインディーズとして電子出版の文芸作品に挑戦しようとしてきたぼくらが明るい展望を持つことは難しい。
実際に昨年からスタートした電子本の販売実績はほぼこれを証明するような低調さであったという実績もあります(涙)。

しかし「ケータイ向け電子コミック」だけとはいえ、長期低落が続いて来た出版業界にとってこの光明は大きかったようです。ここぞとばかりに来年以降は大きく舵を切ってくるでしょう。業界には強烈な横並び体質があり、バスに乗遅れる、というのは一種の強迫概念のようなものです。
実際のところもたもたしていると新規参入してくるところにこれまでの自分たちの縄張りを荒らされ、作品=コンテンツを奪われてしまうという恐怖感もあるのだと思います。

書籍出版では、継続して出版するという条件の下に排他的な出版権が認められているわけですから、重版が出来なくなり、絶版状態の作品はすぐに他社に狙われてしまいます。また書籍出版を対象にしか出版権が設定されていないので、電子出版が市場として動き出しそうな現在、急いでその権利を保持するために電子出版化を進めないといけないわけですね。

こうした動きに対応できるのは大手出版社だけでしょう。
その他の中小・零細出版にはこうした新たな投資へ対応できるだけの体力のあるところは多くないので、電子出版市場が動くことによって出版業界の整理統合、再編成は急速に進むかもしれません。

さて、売れているといわれる「ケータイ向け電子コミック」ですが、その作品の大部分はこれまで数十年で蓄積されたマンガ雑誌とコミック本であるわけで、「ケータイ」というメディアへ新しい才能によるマンガ作品が供給されているわけではない、ということに注意する必要があります。
常に新しい才能が登場し、斬新な作品を供給してきたマンガも九十年代後半をピークにその後は鳴かず飛ばずでヒット作が出ておらず、マンガ雑誌も低調なのはご存知の通りなのです。

しかし数十年に及ぶ膨大な作品ストックの厚みがあるので、それをコミック本にし文庫本化、コンビニでは廉価版と繰り返し、そこから生まれる利益を吸い尽くそうとしている。
その手法の一つに「ケータイ向け電子コミック」というのが新しく登場したというあまり夢も希望もない現実があります。
ケータイ配信で既存の作品が売れて利益を得られるならば、流通や返本にともなう出版リスクは激減するので、これは出版社にとっては大きな福音となったわけですね。

今年の電子出版を取り巻く状況をみると、
「確たる将来への展望はないが、一斉に走り出した一年」
というのが少し辛口ですが、妥当なところではないでしょうか。

来年の電子出版は、電子本の読者が育っていないのに供給だけが先行する大荒れの戦国時代になるかもしれません。
膨大な作品が電子本化されて次々に投入されていくことでしょう。書籍出版でさえ売上低調の中で出版点数だけが増えているのに、電子出版までそれに加わる。

これでは作品と読者の幸せな出会いというのはますます遠ざかることになります。
しかし、こうした過渡期を経ないと新しいパブリッシングの時代は始まらないのは事実です。
秩序が乱れ、混乱した状況にはチャンスも生まれるはず。
それを考えなければいけないでしょう。

 



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はじめまして。「猫間川を探せ」からこちらに来ました。

電子化仕事(出版)に関心のあるTAMO2と申します。こういう時代が来るのは、world wide webがmosaicの技術で一般化したときに予見されたことですが、社会的規範の共有(コンセンサス)や法整備が追いついていないようですね。

出版社としても、それらの動きが読みにくいから、後手後手に回る、と。

確かに、おっしゃるとおり、戦国時代になりそうで、しかもやったもの勝ちになりそうです。
ところで、商売にならないと考えられるものであっても、読者が惚れて電子化しているものも結構あると思うのですが、それらについてはどのように扱うべきか、出版社としても悩ましいところでしょうね。

「もはや商売にはならないけれど、しかし世の中に死蔵されるべきではない」と思う本を小生も電子化しております。一部は出版社のご好意で公表しておりますが、いきなり小生が死ねば、すべて闇に埋もれます。

http://www.geocities.jp/mel...
on 12/18/06 at 10:19:AM
TAMO2さん
個人やインディーズとして新しいパブリッシングを電子出版に期待している者としては、現状にはちょっと不満、不安も感じてます。

>もはや商売にはならないけれど、しかし世の中に死蔵されるべきではない

これは意義も、価値もあることなのですから、やはりやるしかないのでしょう。既存の出版社、それも人文科学系の出版社はすでにかなり経営が厳しくなっていると聞いています。

大手でさえも文化的な出版ということよりも先ずは売れる商品をどうするかで手一杯のようですから、況や……。

ぼくらの電子出版はボイジャー社の協力で行なっていますが、そのボイジャー社が今年、ドットプレスという電子出版サービスをスタートさせました。

▽ドットプレス
https://www.dotbook.jp/dotP...

このサービスを活用すれば、TAMO2さんが現在ネットへUPしている作品を後世に残る形で公開できると思います。

是非、上記のサイトをチェックしてください。
こちらでも相談に乗れることもあると思うので、なにかあればご連絡ください。
on 12/19/06 at 11:59:AM
MAOさん、こんにちは。今回は身の回りのことについて。

小生が電子化した本の多くは大月書店の国民文庫です。大月書店のサイトを作った人とお会いしたことがあります。その方が言うには、大月書店はインターネットというものを根本的に理解していない、その可能性もビジネスチャンスも理解していない、ということです(苦笑)。

で、小生が電子化した書物については、やはり大月書店が事業として出版すべきであると思うし、上のサービスを利用するのも大月書店であるべきと考えます。

とりあえず、大月書店に紹介したいと思います。

ありがとうございました。
on 12/20/06 at 10:40:AM
TAM2さん
そうですね。
版元さんがやはり責任をもって電子書籍化に取り組むべきでしょう。
しかし、それが望めない場合、どうすべきかも考える必要がありますね。
on 12/23/06 at 14:36:PM
初めまして、電子本を作っている阿部といいます、

新しいタイプの物語の仕方として、RPG+ビジュアルノべルの形で作ってみました、

物語の時代は紀元前、アレクサンダー大王の東方遠征の後、

暴れ竜を退治したシャンティーは、その偉業を称えて竜王と呼ばれるようになり、
その名は世界に広がった、国に帰った彼を待っていたのは愛する父王の死であった、
若い新王は、不安の声も聞こえる中で、カルダン国の治世に力を発揮し始める、
・・、しかし、国を治める事は簡単な事ではなかった、周りには強力で巨大な
ウバル国が覇権を広げようとしている・・・。

こちらに置いてあります、
http://www.vector.co.jp/sof...

お暇な時にでも読んでもらえたらと思っています、

こういう電子本にも、読者に喜んでもらえる可能性はあるでしょうか?
感想など聞けたら嬉しいのですが・・・、
よろしくお願いします、

〒189-0024
東京都東村山市富士見町4-15-36
tel:042-395-7142
on 02/27/10 at 19:47:PM